仏教8宗派の葬儀の違いと作法を徹底比較

「うちの宗派って、葬儀でどんな作法があるの?」と思ったことはありませんか? また、他の宗派の葬儀に参列することになり、自分の宗派との違いが気になる方も多いのではないでしょうか。

仏教には日本で広く信仰される8つの主な宗派があり、葬儀の意味や作法はそれぞれ異なります。 「なんとなく知っている」という方も、改めて確認しておくと、いざというときに落ち着いて対応できます。

この記事では、浄土真宗(本願寺派・大谷派)、浄土宗、真言宗、天台宗、曹洞宗、臨済宗、日蓮宗の8宗派について、それぞれの教えと葬儀の意味を解説します。 後半の比較表では、焼香回数・お経を宗派別に一覧でまとめましたので、参列前の確認にもお役立てください。


目次

仏教の葬儀に共通する基本の流れ

宗派が違っても、仏式の葬儀には共通する大まかな流れがあります。

臨終を迎えたら、菩提寺(ご縁のあるお寺)に連絡し、枕経(まくらきょう)をお願いします。 その後、通夜葬儀式火葬という流れで進むのが一般的です。

通夜は故人との最後の夜をともに過ごす儀式で、葬儀式では僧侶が読経し、多くの宗派では引導(故人を浄土へ送り出す儀式)が行われます。 火葬後に骨上げを行い、四十九日法要まで手元に安置するのが多くの宗派に共通した流れです。

ただし、宗派によって「葬儀に込められた意味」「焼香の作法」「唱えるお経」などが大きく異なります。 次のセクションから、宗派ごとの特徴を順に見ていきましょう。

ちょっとしたポイント

「菩提寺がない」「宗派がわからない」という方も増えています。 その場合は、葬儀社に相談すると宗派の確認方法や、僧侶の手配まで対応してもらえることがほとんどです。 焦らず、まず葬儀社に連絡することをおすすめします。


浄土真宗本願寺派(西本願寺)の葬儀

「お浄土へ還る」という考え方

浄土真宗本願寺派は、親鸞聖人が開いた宗派で、阿弥陀如来の「すべての人を救う」という誓い(本願)を信じる宗派です。 総本山は京都の西本願寺です。

浄土真宗の葬儀は、「故人が阿弥陀如来の力によってすでにお浄土に往生した」という考えのもとに行われます。 そのため、「死後の冥福を祈る」という概念がなく、葬儀は「故人の往生を感謝し、阿弥陀如来の教えを聞く場」として位置づけられています。

浄土真宗特有の言葉づかい

この教えから、浄土真宗では使わない言葉や言いかえる表現があります。「ご冥福をお祈りします」という言葉は、浄土真宗では使いません。

「冥福」とは「冥土(あの世)での幸福」を意味しますが、浄土真宗では故人はすでにお浄土にいると考えるため、そぐわない表現となります。

また、戒名(かいみょう)ではなく「法名(ほうみょう)」と呼びます。 「成仏」「供養」という言葉も使わない場合があります。

なお、浄土真宗では「般若心経」を読みません。 般若心経は「自らの力で悟りを開く」という自力の教えに基づくお経であり、「阿弥陀如来の力で救われる」という他力本願を根本とする浄土真宗の教えとは相容れないためです。 参列する際は、こうした点も知っておくと安心です。


真宗大谷派(東本願寺)の葬儀

同じ浄土真宗、どこが違う?

真宗大谷派も、親鸞聖人の教えを受け継ぐ浄土真宗の一派です。 総本山は京都の東本願寺で、西本願寺(本願寺派)と同じ親鸞聖人を宗祖とします。

葬儀の基本的な考え方は本願寺派と同じで、「阿弥陀如来の本願により往生する」という教えが根本にあります。 「ご冥福をお祈りします」を使わない点も共通しています。

本願寺派との主な違い

本願寺派と大谷派の違いは、主に作法の細部にあります。 焼香の回数や方法、お経の読み方に微妙な違いがあります。 具体的な作法については、後半の比較表をご覧ください。

滋賀県には浄土真宗(本願寺派・大谷派)のお寺が多く、地域に根ざした宗派です。

知っておくと安心

本願寺派と大谷派はよく混同されますが、別の宗派(宗教法人)です。 ただし教義の根本は同じため、参列者として困ることはほとんどありません。 喪主・ご遺族の立場では、菩提寺がどちらの派かを確認しておきましょう。


浄土宗の葬儀

念仏を唱えることが最も大切

浄土宗は、法然上人が開いた宗派で、阿弥陀如来の名を唱える「念仏(南無阿弥陀仏)」を重視します。 総本山は京都の知恩院です。

浄土宗の葬儀で最も特徴的なのは、「引導作法(いんどうさほう)」です。 僧侶が故人に対し、死を受け入れてお浄土へ旅立つよう促す儀式で、浄土宗の葬儀の核心ともいえます。

浄土真宗との考え方の違い

浄土宗と浄土真宗は同じ「阿弥陀如来への信仰」をベースにしていますが、考え方に違いがあります。

浄土宗は「念仏を唱える行いによって往生できる」という考えです。 一方、浄土真宗は「行いに関係なく、阿弥陀如来の力で必ず救われる」という考えです。

この違いから、葬儀における読経や引導の位置づけも異なります。 浄土宗では故人の往生を願う儀式として引導が行われますが、浄土真宗では引導の概念自体がありません。


真言宗の葬儀

「即身成仏」という独自の考え方

真言宗は、弘法大師・空海が開いた密教の宗派です。 総本山は和歌山県の高野山金剛峯寺で、多くの分派が存在します。

真言宗の葬儀で中心となる考え方は「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」です。 これは「この身このままで仏になれる」という教えで、葬儀は故人が仏の世界(密厳浄土)へ旅立つための儀式として行われます。

真言宗ならではの儀式

真言宗の葬儀には、他の宗派にはない特徴的な儀式があります。

「灌頂(かんじょう)」は、故人の頭に水をそそぐ儀式で、仏の弟子として迎え入れる意味があります。 「土砂加持(どしゃかじ)」は、祈祷した砂を故人にかける儀式です。 これらは密教ならではの儀式で、葬儀に独特の雰囲気をもたらします。


天台宗の葬儀

多くの宗派の源流となった総合仏教

天台宗は、伝教大師・最澄が比叡山に開いた宗派です。 総本山は滋賀県大津市の延暦寺で、大津市にとってゆかりの深い宗派です。

天台宗は「法華経」を中心としながら、念仏・禅・密教なども取り入れた総合的な仏教です。 浄土宗の法然、浄土真宗の親鸞、曹洞宗の道元、臨済宗の栄西、日蓮宗の日蓮など、鎌倉時代に活躍した多くの宗祖が比叡山で学んでいます。 つまり天台宗は、日本の多くの仏教宗派の源流ともいえる存在です。

葬儀の特徴

天台宗の葬儀は、他の宗派に比べて特定の形式が厳密に定められているわけではなく、地域や寺院によって異なる部分があります。 これは天台宗が「すべての教えを包括する」という性格を持つためです。

基本的には、故人を阿弥陀如来の浄土へ導くための引導作法が行われます。

知っておくと安心

延暦寺(天台宗)は大津市の比叡山にあります。 「滋賀のお寺」といえば延暦寺を思い浮かべる方も多いですが、大津市内で多く見られる宗派は地域によってさまざまです。 菩提寺の宗派は、お寺や家族に確認するのが確実です。


曹洞宗・臨済宗(禅宗系)の葬儀

曹洞宗・臨済宗(禅宗系)の葬儀の特徴

葬儀で師弟関係を結ぶ独特の形式

曹洞宗と臨済宗は、どちらも「禅」の教えをベースにした宗派で、修行と坐禅を重視します。 曹洞宗の総本山は福井県の永平寺(と神奈川県の總持寺)、臨済宗は京都の妙心寺などが本山となります。

禅宗系の葬儀で最も特徴的なのは、僧侶が「師匠」、故人が「弟子」として儀式が進む点です。 葬儀の中で、師匠(僧侶)から弟子(故人)へ戒律が授けられ、仏弟子として送り出されます。 この儀式は「授戒(じゅかい)」と呼ばれ、禅宗系の葬儀の核心です。

曹洞宗と臨済宗の違い

両者は同じ禅宗系ですが、修行の方法が異なります。 曹洞宗は「ただひたすら坐禅をする(黙照禅)」ことを重視し、臨済宗は「師と弟子が問答を重ねる(看話禅)」ことで悟りを目指します。 葬儀の作法にも細部で違いがありますが、「師弟関係を通じて仏弟子として送り出す」という基本は共通しています。


日蓮宗の葬儀

法華経と題目が中心

日蓮宗は、日蓮聖人が開いた宗派で、「法華経(妙法蓮華経)」を唯一の経典として重んじます。 総本山は山梨県の久遠寺です。

日蓮宗の葬儀で特徴的なのは、「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」という題目を唱えることです。 「南無阿弥陀仏」を唱える浄土系の宗派とは、根本的に異なります。

故人は葬儀を通じて、「妙法山の浄土」へ導かれると考えられています。 本尊には「大曼荼羅(だいまんだら)」が用いられます。


宗派別 作法比較表

仏教8宗派の焼香作法と特徴的なお経の比較表

葬儀や法要で実際に役立つ焼香の作法と、その宗派に特徴的なお経を8宗派で一覧にまとめました。 焼香回数は目安であり、地域や寺院によって異なる場合があります。 不安な場合は葬儀社に確認するとよいでしょう。

宗派焼香回数押しいただく特徴的なお経
浄土真宗本願寺派1回しない浄土三部経
真宗大谷派2回しない浄土三部経
浄土宗1回または3回する浄土三部経
真言宗3回する般若心経・理趣経
天台宗1〜3回する般若心経・法華経
曹洞宗2回1回目のみ般若心経・大悲呪
臨済宗1回しない般若心経・観音経
日蓮宗1回または3回する法華経(妙法蓮華経)

※「特徴的なお経」とは、各宗派で読まれることの多いお経を示しています。 般若心経のように複数の宗派で共通して読まれるお経もあり、地域や寺院によって読まれるお経は異なります。 数珠については、宗派によって正式なものが定められています。詳しくは別記事で解説します。

ちょっとしたポイント

参列者として他の宗派の葬儀に出る場合、焼香の作法を完全に合わせる必要はありません。 「1回、静かに丁寧に行う」だけでも失礼にはなりません。 作法より、故人を偲ぶ気持ちが大切です。


よくある質問

宗派がわからない場合はどうすればよいですか?

まず、お墓や仏壇を確認するのがおすすめです。 お墓の戒名(または法名)の文字から宗派がわかることがあります。 浄土真宗であれば「釋(釈)〇〇」という法名が多く、他の宗派では院号や居士・大姉などがつく戒名が一般的です。

わからない場合は、親族や葬儀社に相談してみましょう。

浄土真宗で「ご冥福をお祈りします」は本当に使えないのですか?

使わない方が良いですが、使ったとしても失礼として受け取られることはほとんどありません。 浄土真宗の考え方として、故人はすでにお浄土にいるため「冥福を祈る」という表現がそぐわないというものです。 気になる方は「お念仏申します」「安らかにお眠りください」といった言葉を選ぶとよいでしょう。

他の宗派の葬儀に参列するとき、焼香は合わせた方がよいですか?

無理に合わせる必要はありません。 参列者は「自分の宗派の作法で行う」というのが一般的な考え方です。 わからない場合は、周囲の方の様子を見て合わせるか、「1回、静かに丁寧に行う」だけでも失礼にはなりません。

浄土真宗と浄土宗はどう違うのですか?

どちらも阿弥陀如来を信仰する宗派ですが、「救われる理由」が異なります。 浄土宗は「念仏を唱える行いによって往生できる」という考えです。 浄土真宗は「念仏を唱えるかどうかに関わらず、阿弥陀如来の力で必ず救われる」という考えです。 この違いから、葬儀の儀式の組み立てや使う言葉にも差が生まれています。

曹洞宗と臨済宗は何が違うのですか?

どちらも坐禅を重視する禅宗系の宗派ですが、修行の方法が異なります。 曹洞宗は「ただひたすら坐禅をする」ことで悟りを目指します。 臨済宗は「師匠との問答(公案)を通じて悟りを目指す」という違いがあります。 葬儀の作法にも細部で差はありますが、どちらも「師弟関係を通じて故人を仏弟子として送り出す」という基本は同じです。


まとめ:宗派の違いを知って、安心して葬儀に臨もう

この記事では、日本の仏教8宗派の葬儀の特徴と作法の違いについて解説しました。

ポイントは以下の3つです。

宗派によって「葬儀に込められた意味」が異なります。 浄土真宗は「すでに往生した」という前提で行われ、禅宗系は「師弟関係を通じて送り出す」など、根本の考え方が違います。

焼香の回数や押しいただくかどうかは宗派で異なりますが、参列者は自分の宗派の作法で行っても問題ありません。 大切なのは作法より、故人を偲ぶ気持ちです。

宗派がわからない場合は、仏壇・お墓・親族への確認が有効です。 葬儀社に相談すれば、確認方法から僧侶の手配まで対応してもらえます。

宗派の知識は、突然の葬儀でも落ち着いて動くための助けになります。 この記事が、いざというときのお役に立てれば幸いです。

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